トップ公式戦初出場の久保建英に見る、メッシのデビュー戦との共通点 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ルーキーで「ドリブルで仕掛けるのが得意」という選手がいる。しかしデビュー戦では、90分間戦っても一度も見せられない、というケースのほうが多い。1回と0回、そこには大きな溝がある。久保は前者だった。

「あそこで仕掛けなかったら、ストライカーではないので。後ろから来ているのは分かったので、倒されるくらいならシュート打っておこうと思いました。ファウルになってよかったです」

 久保は平然と言ってのける。そして自ら得たFKを左足で蹴っている。ニア上を狙ったキックは落ちきらなかった。目を見張るべきは、彼が蹴ったという事実だろう。本来は右利きのキッカーの位置。キャリアのある年長選手は大勢いた。

「周りから蹴るように勧められた」と本人は言うが、自分が決める、という覇気が漲(みなぎ)っていた。それを周りが感じ取った、という方が正しい。少年は、誰かに蹴らせてもらったのではなく、自ら蹴ったのだ。

 結局、これが久保のハイライトになっている。

 実際の話、チームの戦いに貢献できたか、というと微妙なところではある。久保が入ってからFC東京のペースは落ちた。攻勢に出た札幌に押されることになった。久保自身、決定的な仕事はひとつもしていない。

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