大宮がダービーで見せた「瀬戸際の力」。弱すぎた流れを断ち切れるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 そんな"弱者の連鎖"に取り込まれてしまった。

「練習でできているのに、試合でできない」

 渋谷洋樹監督はそう洩らしていたが、心理面の影響は大きかった。守備で相手に寄せる距離が少し遠く、走るべき選手のランニングが少し遅れる。ディテールのズレがあった。

 そこで浦和戦、渋谷監督は通常のシステムをかなぐり捨て、割り切って挑んだ。主に使ってきた4-4-2ではなく、変則の5-3-2(攻撃では金澤慎が右ボランチに入って4-4-2)を採用。浦和の攻撃を耐え抜く戦いを、最初から選択した。

「予想したように、大宮は守備を基調にしてきましたね。走り、戦うというやり方。我々は疲労の問題(ACLも戦う日程)があって、いつもの連動性や切れを欠いていましたが」

 浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は語ったが、守る大宮に対し、序盤はワンサイドで試合を進めている。しかし決定力を欠き、シュートが枠を捉えられない。前半5分に興梠慎三がヘディングで合わせたが、GK塩田仁史に難なくキャッチされた。

「前線が(プレスで)限定してくれたし、5バックも安定していたんで。ボールを持たれていたわりには、落ち着いて対応できていました」(塩田)

 大宮はGK塩田を中心にした守りの安定によって、効果的な攻撃を何度か繰り出せるようになった。前半22分には敵陣でつないだ後、FW瀬川祐輔が日本代表DF遠藤航との競り合いから見事に入れ替わり、GK西川周作と1対1に。これはストップされたが、決定機の数だけなら、大宮のほうが多いほどだった。

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