J3転落で地獄を見た大分トリニータが、
V字回復に向かっている理由

  • 浅田真樹●取材・文 Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 大分はこの試合、開始からわずか5分にして、指揮官が「狙っていた。練習ではあまりうまくいかなかったのでやめておこうかと思ったが、うまくいった」とほくそ笑む"スペシャルプレー"(FW後藤優介がCKをニアサイドに低く蹴り込むと、ニアに入ってきたFW三平和司がマイナス方向へ流し、ゴール前のDF鈴木義宜がワンタッチで押し込んだ)で、首尾よく先制。だが、リードを奪ったあとは湘南に試合を支配され、守勢に回ることが多くなった。

 どうにか虎の子の1点を守り切ったが、特に試合終盤はゴール前で耐え忍ぶ時間が短くなかった。3バックの一角を担う、DF福森直也が「1点取られてもおかしくなかった。ラッキーだった」と振り返るのも、当然の展開である。

 しかし、だからと言って、大分がただただ守備を固めて劣勢をしのぎ、ワンチャンスを生かすサッカーで勝ち点を稼いでいるかというと、そんなことはない。

 昇格候補を相手に勝負を挑んだ「自分たちらしいサッカー」とは、自らボールを保持し、低い位置からでもショートパスをつないで攻撃を組み立てる「ポゼッションサッカー」。これこそが、現在の大分の好調を支えていると言っていい。

『Stats Stadium』のデータによれば、第8節終了時点で大分の1試合平均のパス本数は556.1本。これはJ2で3番目に高い数字である。

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