短すぎた札幌・小野伸二の浦和凱旋。「天才」に懸ける手はなかったか (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 しかしその6分後に関根貴大に勝ち越しゴールを奪われ、リードされてハーフタイムに突入した時、スタジアムに詰めかけた3万6000人を超えるファンの多くは、後半開始からあの天性のボールタッチや柔らかいフィードが見られるのではないかと期待していたはずだ。

 けれどもハーフタイムの交代はなく、浦和がゲームを支配する展開のまま時間が過ぎていく。残り20分を切り、実利的にも小野をそろそろ出すべきだと思い始めた頃、興梠慎三にPKを決められてリードを広げられてしまった。

 その5分後にようやく投入されると、小野は右サイドでボールを受けて中央にパスを出し、それを受けようとした菅が倒されてFKを獲得。ゴールまで30メートル以上はありそうなやや遠目の位置だったが、小野は福森晃斗と共にキックを打つ構えを見せた。結局、FKは「札幌のシニシャ・ミハイロビッチ」こと福森に任せ、背番号24の左足から放たれたシュートは鋭く曲がって、日本代表GK西川周作の手をかすめてネットを揺らした。

 しかしそれ以上の反撃の時間はなく、札幌は2-3で敗れた。これで今季のアウェー戦は4戦全敗。首位の本拠地でなんとか接戦に持ち込み、かすかな勝機を見出そうとした指揮官のプランも納得できないものではない。「前半は消極的だったのが残念」と試合後に敗軍の将は語り、後半に巻き返せたことを強調した。

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