まずはサルガド。子供たちの指導に
「銀河系軍団」を呼ぶ男は何者か?

  • 栗田シメイ●文・写真 text & photo by Kurita Simei


 転機となったのは2012年。日本でも注目を集めた、「ピピ」こと中井卓大がレアル・マドリードのカンテラ(育成組織)入団を果たした際に、稲若は献身的なサポートを行なった。月に何度もスペインに通いつめ、中井の相談に乗るうちにレアル・マドリードのフロント陣と関係性を築いていく。その後も、レアル・マドリードが中国、韓国、メキシコなど各地で行なう選手発掘のためのキャンプを視察し、足繁く現場に通いつめた。

「関係性ができた後は、連絡を小まめに取ることを徹底しました。スピード感を大切にし、メールや電話は時差関係なく深夜でもすぐにレスポンスする。最初に仲良くなったスタッフに力があり、サンティアゴ・ソラーリ(現・Bチーム監督)を含め、各関係者とつないでくれた幸運もありましたが、それでも信頼関係を築くことは決して簡単ではなかった。ただ、『徹底できた』ことが結果につながったと思います」

 筆者と稲若は5年来のつき合いになるが、当初から稲若が繰り返しているのは「サッカーを引退した後の人生のほうが長いことを、選手たちが考える必要がある」ということ。国内の平均引退年齢が26歳とされるサッカー選手が、ピッチを離れた後にうまく次の一歩を踏み出せないケースも多い。しかし稲若の言葉に触れると、「元サッカー選手」という肩書きは、活かし方や行動力によって大きく化ける可能性を秘めていることを感じる。

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