まずはサルガド。子供たちの指導に「銀河系軍団」を呼ぶ男は何者か? (2ページ目)

  • 栗田シメイ●文・写真 text & photo by Kurita Simei

 稲若を突き動かすのは、「日本サッカーの発展のため」という想いだ。それは、欧州トップクラブの育成事情を肌で感じてきた稲若だからこそ抱く、日本の育成に対する強い危機感でもある。

「現在の日本サッカーの課題は明確です。日本人は世界でもトップクラスに『うまい』。特に、ドリブルの技術は世界でも有数といえます。でも、サッカーを知らない。日本ではドリブルがうまい選手を『技術がある』と評価しますが、世界のトップクラスの国は、人が動くのではなくてボールを動かす選手が評価されます。

 これはサルガドの弁ですが、『セビージャで結果を残せなかった清武(弘嗣)は技術こそ足りていたが、ボールの奪い方やサッカー観の違いに最後まで適応できなかった。逆に、エイバルの乾(貴士)が結果を出し始めているのは、スペインのサッカー観に慣れ、どこで仕掛けるべきか、引くべきかを理解し始めたからだ』と言っていました。ボールホルダーへの寄せや、体を接触させるためのわずか1、2歩。それが日本と世界との距離だと思っています」

 レアル・マドリードやアトレティコ・マドリード、エイバルやアルゼンチンの各クラブのフロントと深いコネクションを持つ稲若は、「その距離を埋めるため、根本的な評価の仕方を再考してもらうために、育成世代から世界トップクラスの選手の言葉に耳を傾ける機会を作りたかったんです」とクリニック開催の目的を明かす。

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