6月イラク戦へ。福田正博が、本田圭佑と
酒井高徳の「戦力度」を考える

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 ボランチにどんな役割を求めるかは、監督によってさまざま。ハリルホジッチ監督の場合、過去に原口元気をボランチで起用したことからもわかる通り、素早いアプローチでボールを奪い、「前に出ていく強さ」を求めている。その意味で、タイ戦での高徳の相手ボールホルダーに寄せる速さ、インテンシティの高さは際立っていた。「デュエル」を重視するハリルホジッチ監督が、プレー強度の高い高徳を起用したのは当然だろう。

 ただし、高徳がビルドアップで苦労していたことも事実。その理由は、パスを受けようと「動きすぎて」パスコースを消してしまっていたところにある。さらに、動くスピードが速いのも問題だ。速く動かれると、味方はピンポイントでパスを出さなければならず、ボールロストが怖くてパスを出しにくい。

 ボランチがDFラインの前で動き回るのは、ボールを動かしながら相手の陣形を動かしてギャップを生み出すためであり、常に視野を確保しながらポジションを取っていく必要がある。しかし、高徳の場合は自らが動くことでスペースを作り、他の選手にそこを使わせようとしていた。もちろん、そうした動きも必要だが、それだけではビルドアップが立ち行かなくなる。

 ボールを奪おうとするあまり、自分のポジションを「離れすぎてしまう」場面もあった。ボランチがふたりいても、高徳も、もうひとりのボランチも動きすぎると、中盤のバランスがとれなくなる。

 W杯ロシア大会でフィジカルに長(た)けた強豪国を相手にした時に、「堅守速攻」を志向するハリルホジッチ監督が、高徳をボランチとして起用する可能性は十分にある。守備能力が高いだけに、中央に位置するボランチにとって必要な、360度全方位を意識して動くプレーの質の向上に期待したい。

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