マリノス新旧10番対決。齋藤学はためらわずに中村俊輔を削った (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

「オフサイドか微妙だと思ったけど、マル(マルティノス)が見えた」

 齋藤は先制点の場面をそう振り返ったが、顔を上げ、視野も確保していた。

 昨シーズン途中から、齋藤のプレーは「突破、崩し」だけではなくなっている。パスの出し手としても成熟。どこで受け、どこに走らせるか、スペースを使う力量が格段に上がった。例えばこの日も、中央から左タッチラインにボールを引き出した後、敵センターバックを釣り出し、中央に天野純を引き込み、パスを通し、決定機を作っている。その直後には逆に中央寄りにポジションを取り、左タッチラインへ天野を走らせた。

「齋藤が戦術」。浦和レッズのミハイロ・ペトロヴィッチ監督は的確に表現していたが、横幅だけを使い、プレーメイキングをし、決定的打撃を与えられる選手は、Jリーグには他にいない。プレーの渦の中心になっているのだ。

 一方、磐田の戦術も中村を中心に回っていた。彼が中盤で左足にボールを収めるだけで、前線に動きが出る。中村が蹴った左CKのこぼれを、大井健太郎がボレーで叩き込んで同点に追いつく。試合はどう転んでもおかしくはない時間が続いた。

「(後半55分に)アダイウトンを投入した10~15分がキモだった」(磐田・名波浩監督)

 その磐田の猛攻が、ぴたりとやんだ頃だった。

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