マリノス新旧10番対決。齋藤学はためらわずに中村俊輔を削った (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

「負けられない」

 横浜FM陣営には、そんな気運が漲(みなぎ)っていた。

 その流れを作り出したのは、主将である齋藤だった。前節、セレッソ大阪に不甲斐ない内容で敗れた後、緊急にミーティングを行ない、チームに活を入れた。

「連勝してから勝てなくなって、気の緩みを感じたんです。優勝するためになにが必要なのか。ひとりひとりが戦う姿勢が必要だった」

 そう明かしていた齋藤自身が、立ち上がりから横浜FMの攻撃を牽引した。左サイドから中央へと、ドリブルでバックラインの前を横切る。一気に縦を突っ切れるだけに、肌が粟立つような凄(すご)みがあった。

 ディフェンダーにとっては、膝が震えるような恐怖だろう。どの扉から侵入してくるかわからない。施錠したはずの鍵が、バチンと外されるのだ。

「畏怖」

 齋藤は磐田の守備陣にそれを与え、身体を凍りつかせ、思考を鈍くさせる。

 前半26分だった。左サイドでボールを受けた齋藤は、間合いを詰められないディフェンダーをあざ笑うように右に外す。そこで中村、ムサエフと複数の選手に囲まれるも、さらに抜け出されるのを恐れて飛び込めない心理を利用。フリーに近い状態でピンポイントのクロスを打ち込んでいる。

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