予想外の凋落。「王者」サンフレッチェ広島に何が起こっているのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Ken Ishii - JL/Getty Images for DAZN

 しかし、前監督が広島を離れてすでに5年。頼りの中心軸も、徐々に揺らぎ始めている。

 例えば、第5節柏戦に先発した11名のうち、ペトロヴィッチ監督時代を知る選手は、青山、MF清水航平、DF水本裕貴の3名だけ。特に前線の変則3トップ"1トップ+2シャドー"は、すべて昨季途中から今季にかけて加入した選手である。要するに、広島のコンビネーションや連動性の要とも言うべきポジションの3名は、完全に入れ代わっていた。

 その結果、3バックやボランチから前線へ効果的な縦パスが入ることはほとんどなく、当然、それを合図に1トップ+2シャドーが阿吽(あうん)の呼吸を見せることもない。それどころか、「ビルドアップに長けている広島に自由を与えないよう、前線から連動してプレッシャーをかけ続けた」(柏・下平隆宏監督)という柏の前に、パスの出しどころを見つけられない3バックやボランチが、あっさりとボールを失うケースのほうが目についた。

 敵将のコメントにもあるように、広島に対して対戦相手が高い位置からプレスをかけることは定石。決して今に始まったことではなく、広島の選手にしても面食らうようなものではなかったはずだ。

 にもかかわらず、広島はあまりにも脆かった。結果的にボールを失うかどうかはともかく、そのプレスをかいくぐってどうにか自分たちの形に持ち込もうとする野心が感じられなかった。どこか淡泊だった。これでは持ち味を発揮するのは難しい。

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