「最後までピッチにいたい」。歓喜の裏で小笠原満男が感じていた無念 (5ページ目)

  • 佐野美樹●取材・文・撮影 text&photo by Sano Miki

 若い頃は、体の使い方とか、力の抜き方とか、そういうコントロールがうまくできていなかったのもあって、いろいろなところに力が入っていたというか。だから、疲労度は昔のほうがあるんだと思います。それが経験を重ねていくにつれて、頭を働かせて、効率よく動いて、肝心なところではハードワークを増やす、ということが身についていくので、年齢がどうこうっていうことを強く感じることはないですね」

 そう話すと、はにかみながら言葉をつなげた。

「でも、よくよく考えたら、昔からあんまり疲れたとかって、ないんだよね(笑)。だって幸せなことじゃん、サッカーができるっていうのが。震災のときも思ったけどさ」

 小笠原にとって、原動力のひとつになっているのが、6年前に起きた東日本大震災で被害に遭った、故郷・東北への思いがある。いまだ仮設住宅で生活している人たちも多く、子どもたちが大好きなサッカーを思う存分楽しむことができていない現状に、ずっと胸を痛めてきた。そのため、東北出身のJリーガーを募って『東北人魂』としての支援活動を行なってきた。震災後、年始のオフには必ず東北の各県を訪れ、それは、震災から6年経った今も変わらない。

 そのイベントでは、サッカーをしたことがない子どもたちも一緒に、みんなでボールを蹴って、少しでも元気になれるようなものを今までは心がけてきていた。しかし6年目となる今回からは、未来のJリーガーを育成すべく、サッカーをがんばっている子どもたちが本気で勝負できる場を提供することになった。現役Jリーガー自らがMVPや健闘賞などを選出し、本格的な『大会方式』のイベントへとステップアップさせた。

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