ジュビロのN-BOXが炸裂した2001年、ライバル鹿島との一戦 (6ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi


鹿島戦について語る、現・磐田コーチの鈴木秀人氏 Photo by Sportiva鹿島戦について語る、現・磐田コーチの鈴木秀人氏 Photo by Sportiva 名波の言葉を、鈴木秀人が引き取る。

「ここか、ここしかないっていう状況にしてくれるから、後ろは狙いやすいんですよ」

 さらに、名波が画面を指差しながら、続ける。
                
「見てもらえれば分かると思うけど、鹿島にくさびのパスをほとんど入れられていない。それも、俺がボックスの中央にいることの利点で、レアルの中盤から出てくるくさびの縦パスを寸断する狙いがあるっていうことは、やっていくうちに少しずつ分かっていった。ああ、そういうことねって」

 サックスブルーの選手たちはボールを奪うとポジションを入れ替えながらボールを出し入れし、次々とチャンスを作り出していく。

「アントラーズはもっと名波を警戒しないとダメですね。ジュビロは全部、名波を経由して攻撃をやっている。名波だけがポジションを固定して真ん中にいるんです。あとの選手はわりあい自由に動いているんですけれど」

 画面から聞こえてきたのは、テレビ中継の解説を務める加茂周の声である。

 左サイドにいるはずの奥がドリブルで中央に侵入し、左ボランチの服部はタッチライン際を果敢に攻め上がる。右サイドでは藤田と福西が入れ替わりながらゴール前に飛び出し、中央では名波がスペースを睨みながら、軽快にボールを散らす。

 54分には、高原のシュートがポストに当たって跳ね返ったところを藤田が蹴り込み、磐田が逆転に成功する。その後も、磐田がゲームをコントロールし、71分に名良橋がシュートを放ったシーンを除いて、鹿島に反撃の機会を許さなかった。

 理想に近いイメージで新戦術・新システムを機能させたという意味で、この鹿島戦は難産の末に「N-BOXの産声」が聞こえたゲームとなったのだった。

(つづく)

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