2016年MVP、中村憲剛という「サッカー人」を創った3人の恩師 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 佐藤との出会いもまた、ちょっとした運が重なってのことだった。

 当時の中村は、試合にこそ出場していたが、それほど脚光を浴びるような選手ではなかった。しかも、3年生のときにはチームが関東2部リーグ降格の憂き目にあってしまう。

「自分が最上級生になって、キャプテンになった年に、まさかの大学史上初の2部降格ですからね。自分自身もかなり責任を感じていましたし、サッカー部としても何かを変えなければならないという状況にありました。そのときに来たのが、健さんでした」

 中村が大学4年生になり、佐藤が指導に来るようになると、ある日、面談の場が設けられた。そこで中村は、佐藤にこう問いかけられた。

「おまえはどうしたいんだ?」

 佐藤について、「豪快な人で、とにかくサッカーが好きな人だったので、すぐに信頼できる人だと思った」と印象を語る中村は、だから素直に思いの丈をぶつけることができた。

「就職活動をしないで、とにかくチームを関東1部に昇格させるために、サッカーをがんばります。それと......将来、サッカーでメシを食べていきたいんです」

 中村の瞳の奧に宿る強い意志を感じとった佐藤は、「そうか。わかった」と返事をすると、後日、Jリーグのクラブの練習参加を取り付けてきてくれた。それが"川崎フロンターレ"だった。

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