佐野日大、あっぱれベスト4。前橋育英は「史上最悪の代」で初戴冠へ (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 一方で前橋育英にとっても、苦しんだ末の2年ぶりのファイナル進出だ。今夏のインターハイ予選の初戦で敗れたチームは、「逆襲」をテーマに掲げ、この選手権に臨んでいた。

「正直、インターハイ予選で負けた時点では、史上最悪の代だと思っていました」とFWの人見大地(3年)が言うように、夏の段階では決して選手権で勝てるような状況ではなかった。それでも「何から始めていいのかわからない」(山田耕介監督)なか、個のスキルやフィジカル、あるいは前線のコンビネーションといった基本的な部分を徹底的に伸ばしてきた。

 2年前に準優勝を果たしたチームには、MF渡邊凌磨(FCインゴルシュタット04/ドイツ)やMF鈴木徳真(筑波大)といったタレントが揃っていたが、今回のチームにはそうした個性は存在しない。それでも個の力がない分、組織力には揺るぎない自信を持つ。

 佐野日大戦でも巧みなコンビネーションで決勝ゴールを奪い、終盤に押し込まれながらも守備組織は崩れなかった。

 とりわけ際立つのは、今大会無失点の守備力だ。2年生が主体となる4バックは高さと強さを兼備し、チャレンジ&カバーの約束事を徹底。実は押し込まれた佐野日大戦の後半も、1本もシュートを打たれていない。お互いがお互いをカバーする補完性の高さこそが、前橋育英の躍進を支えるファクターとなっているのだ。

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