高校サッカー選手権の前回王者、
東福岡が立ち直った「1回戦負け」の夜

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva

 このままじゃ、冬の選手権は予選で終わる──。

 出てくる意見は技術や戦術ではなく、ハードワーク、コミュニケーションの妨げになっていた「気持ち」に関するものがほとんどだった。長時間続いたミーティングの締めくくりとして、キャプテンの児玉は「すべてを言い合えるチームになろう。ついてこれない奴は置いていく」と厳しい言葉を投げかけた。それをホワイトボードに力強く書き記す姿に、藤川は「普段はそんなことを言う奴じゃない。それほどに追い詰められていた」と、悲壮感にも似た決意の固さを感じたという。

 その夜以降、チームはみるみる変化していった。練習から必死にボールを追い、疑問に思ったことがあれば学年や実績に関係なく、すぐに伝え合うようになった。時にはケンカ寸前に発展することもあったが、そのぶつかり合いによって、失われた連帯感を取り戻していった。

 プレミアリーグで負けることはあっても、その都度ミーティングを重ねることによってチーム力は向上。選手権予選の4試合では18得点1失点と、攻守にわたって他を寄せつけずに福岡県代表を勝ち取った。

 CBとしてチームを支えた児玉は、チームの成長に確かな手ごたえを感じ取っていた。

「個を出しながらも、ハードワークできる選手が増えたと思います。東福岡の特長であるサイド攻撃でも、サイドの選手に任せるんじゃなく、多くの選手が関わって打開することができるようになりました。予選では決勝に向けて調子を上げることができて、今は100%に近い状態。本番に向けて緊張もありますが、そのプレッシャーを楽しめるくらいになっています」

 もともと能力の高かった選手がお互いを高め合うことで、今度こそチームに穴はなくなった。一枚岩となった東福岡が、大会2連覇を果たす準備は整っている。

(写真提供:ニューバランスジャパン)

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