「1位なら最大15億円」の強化配分金は、Jリーグをどう変えるのか (4ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 今でこそ、ゴールドマン・サックスから転身したファジアーノ岡山の木村正明社長や、公認会計士から鹿児島ユナイテッドの社長となった徳重剛氏など、それまで培ったキャリアを経営に活かせる人材を採用するクラブが出てきた。また、Jリーグが2015年から「JHC教育・研修コース」を立命館大学と共同で設立するなど、プロスポーツの経営に長けた人材を養成しようという動きもある。

 しかし、これまでのJリーグでは、それまでほとんど経営に携わってこなかった人物が、支援企業からの出向という形でクラブの社長を務めるケースが目立っていた。サッカーは「いい選手を集めても勝てない」こともあるし、「チームの勝利が集客に直結しない」こともある。つまり、「いいものを作れば結果につながる」といった自動車メーカーなどの企業での経験が通用しないケースも多いのだ。まして、Jリーグのクラブ幹部の職が、次のポジションが決まるまでの腰掛けと考えていたら、とても務まるものではない。

 今後は、配分金などで経営面の手腕が如実に数字で表れることになる。地方の小さなクラブを出発点にし、クラブ経営で結果を残した人材が、やがては「プロフェッショナルの経営者」としてビッグクラブに引き抜かれて手腕を発揮する時代になっていくはずだ。

 そうしたキャリアアップの対流が生まれて初めて、Jリーグは真の意味での「プロフェショナルリーグ」へと発展していくといえる。

 また、2016年シーズンの締めくくりに、Jリーグの潜在能力を鹿島アントラーズが示してくれた。クラブW杯で決勝まで駒を進め、世界最大規模の収益を誇るレアル・マドリードをあと一歩のところまで追いつめた。ただし、この1度だけでは「まぐれ」で片付けられてしまう。こうした結果を継続して残せるようになるためにも、2017年シーズンから始まるJリーグ改革が、日本サッカー界を大きく発展させるものになることを期待している。

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