なぜか失点しない鹿島。神がかった「勝負強さ」で初のクラブW杯決勝へ (3ページ目)

  • 浅田真樹●文text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影photo by Sano Miki


 しかも、なかなかゴールが奪えないアトレティコに、まさかの「災難」がふりかかる。それは前半30分のことだった。

 試合を続けようとする両チームの選手を制したレフリーが、しばらく無線で何事かやり取りした後、バックスタンド側のタッチライン沿いに設けられた見慣れないブースに走り寄る。そしてモニターで映像を確認すると、アトレティコ側のゴール方向を指さし、鹿島にPKを与える旨を宣告した。

 今大会で導入されたビデオアシスタントレフリーによって「ビデオ判定」が行なわれた結果、すでにノーファールとして試合は進んでいたプレーについて、時間をさかのぼって判定が覆されたのである。

 ビデオを見る限り、FKに合わせてゴール前に走り込もうとするDF西大伍の足に、ベリオの足がかかっているのは間違いない。だとしても、その瞬間にファールを取られなかった以上、従来の試合であれば起こりえないPKである。アトレティコの側に立てば、「我々は新しいテクノロジーの被害者になってしまった」(ルエダ監督)と言いたくなるのも無理はない。

 少なくともFIFA主催の大会では世界初となる、ビデオ判定によって得たPKをFW土居聖真が落ち着いて決め、鹿島が先制。石井正忠監督が「先制点はゲームのなかで大きなウエイトを占める」と語るほどのアドバンテージが、思わぬ形で鹿島の手中に転がり込んだ。

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