この日、金崎夢生はJリーグ史に名を刻む「偉大なるヒール」となった (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 さらに金崎の勢いは止まらない。79分、FW鈴木優磨が倒されて得たPKを、「蹴らせてくれ」と名乗り出た本人から半ば強引に奪い取って起死回生の逆転ゴールを奪取。耐えがたい重圧がかかるなか、高い技術とメンタルの強さを示し、日本代表の守護神が守るゴールを冷静に射抜いた。

 鈴木とのやり取りからもうかがえるように、金崎のスタイルの根幹を成すのは、その強烈な自己主張だろう。「俺に任せろ」「俺が決める」。規律や献身が求められる日本人のメンタリティのなか、ともすれば組織の歯車を狂わせかねない金崎の振る舞いは、忌み嫌われるものかもしれない。実際、今夏に起きた"事件"は、完全に金崎にヒールのレッテルを貼った。交代を告げられ、指揮官に対して激高するなど、とうてい言い訳できない蛮行だ。

 ただ、その行為に走らせたのは、金崎の強烈なまでの自我であり、それはエースとしての責任感とも置き換えられる。事件の起きた8月20日の湘南ベルマーレ戦、金崎が交代を告げられたのは0−0の状況下だった。得点が求められるなかでピッチを去ることを命じられたのだから、エースとしてのプライドが傷つけられたのは想像に難くない。

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