年間3位からJ王者へ。アントラーズとレッズとは何が違ったか (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 それでも試合時間は、ロスタイムも含めれば、まだ優に10分以上はあった。逆転の必要はなく、同点に追いつけばいい浦和にとっては、焦る必要はないはずだった。

 ところが、浦和は失点直後から槙野をトップに上げ、途中出場のFWズラタンとの2トップにし、焦って雑なロングボールを放り込むばかり。すでに交代枠も使い切っており、まさにこうした展開の試合で勝負強さを発揮するFW李忠成も投入できない。

 結局、その後に訪れた浦和のチャンスは、ロスタイムにMF武藤雄樹が放ったボレーシュートくらいのもの。さしたる決定機を作り出せないまま、試合終了のホイッスルを聞いた。

 どちらにとっても、自力で優勝を決められる決勝戦。そこでは「勝ち慣れた者」と「勝ち慣れていない者」との差、特に心理面での両者の差は明白だった。鹿島の憎らしいまでの勝負強さには、ただただ感服するしかない。

 だが、試合後、キャプテンのMF小笠原満男は「勝負強い」のひと言ですべて片づけられてしまうのを拒むように、「勝負強いから勝てるほど、この世界は甘いものじゃない」と言い、こう語った。

「練習から一生懸命やって、試合でも必死に戦って勝ってきたチーム。そこははき違えてはいけない」

 なるほど、数々の栄光を知る37歳の言う通りだろう。だとしても、勝負強さという点においてあまりに対照的なクラブの対戦が、その見立て通りの結果に終わったことは、たまたまこの1試合だけの結果、とは考えにくい。

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