愛するセレッソをJ1へ。手負いのエース・柿谷曜一朗の悲壮な覚悟 (4ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 説田浩之●撮影 photo Setsuda Hiroyuki

 86分に交代で退く直前にも、長いパスを絶妙のトラップで柔らかく止め、左足で巻くように逆サイドのゴール上隅を狙うシュートを放った。シュートはわずかにゴール上に外れたが、流麗な一連のプレーは、まさに柿谷の真骨頂だった。相手ディフェンスにしてみれば、本調子にないとわかってはいても、これを見せられたらフリーにはできない。

 コンディションがどうであれ、柿谷がこの試合の行方を大きく左右する存在だったことは、疑いようがない。

 結果的に、セレッソは1-0でリードしながら、試合終了間際に同点に追いつかれ、1-1で引き分けた。

 リーグ戦の成績上位が勝ち上がるというルールに助けられての決勝進出に、「プレーオフなので、どうであれ(決勝に)上がれればよかった」と言いつつも、「こういう(守備に回る)展開は誰もが予想していた。そこで守り切れないと、この先につながらない」と柿谷。復帰後初となる自身のゴールについても、「よかったし、うれしかったけど、勝ってないから」と厳しい口調で語る。

 1週間後に控えた、絶対に取りこぼしが許されないファジアーノ岡山とのプレーオフ決勝を前に、柿谷はキャプテンらしく、表情を緩めずに続ける。

「まだ僕らにはチャンスがある。このチャンスを必ずつかんで、全員でJ1へ行きたい。次もホームでできるが、今日と同じような試合展開になると思う。油断することなく、しっかり準備して、勝ち上がって終わりたい」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る