愛するセレッソをJ1へ。手負いのエース・柿谷曜一朗の悲壮な覚悟 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 説田浩之●撮影 photo Setsuda Hiroyuki

 菅野もすぐに体勢を立て直し、シュートコースを消そうと前に出た。だが、そんなGKの動きを見切ったように、柿谷が左足でフワリと浮かしたボールは、柔らかく菅野の頭上を超え、ゴールに転がり込んだ。

 勝てばもちろん、引き分けでも決勝に進出できるセレッソにとっては、大きな、大きな先制点だった。セレッソの大熊清監督は、驚きまじりにエースの働きを称える。

「正直、4試合目でよくここまで(コンディションが)戻ってきた。5カ月以上休み、勝負がかかった試合のなかで、ああいうこぼれ球を狙っている。体力もそうだが、頭のハードワークや、スキを突くというところは、(周りが)言い続けても本人が気づかないとできない」

 当たり前のことではあるが、柿谷が決してトップコンディションにないことは、試合を見ていればすぐにわかる。自身もそれがわかっているからこそ、トップギアに入れることなく、抑え気味にプレーしている印象を受ける。運動量は明らかに少ない。先制したあと、セレッソが守勢に回るなか、「前半に比べ、後半は曜一朗のプレスバックが遅くなっていた」と、大熊監督も認める。

 しかし、それでも柿谷の存在感は抜群だった。

「ディフェンス(をすることが大事なの)はもちろんだが、点を取ることが一番のディフェンスやと思ってやっている」

 そう語る柿谷は、最前線でカウンターの脅威になり続けた。

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