清水エスパルスが危機的状況から
J1昇格を果たした「大逆転」の真相

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • 日刊スポーツ/アフロ●写真 photo by Nikkan sports/AFLO

 大前が「若手の目の色が変わってきた」というほど、FW金子翔太をはじめ、FW北川航也、MF石毛秀樹ら若いサブ組が、練習から熾烈なポジション争いを展開。新たに生まれた競争意識がチームを活気づけ、さらなる上昇ムードをもたらした。

 チャンスを得た金子は、「エースに代わる出場は責任がある。結果を出さなければいけない」と強い意欲でピッチに向かった。金子は肝心のゴールこそ、なかなか奪えなかったものの、高い位置からの守備でチームの勝利に貢献。大前の復帰後も好調を持続して、小林伸二監督は「金子の調子がいいから」と先発で起用し続けた。

 大前の離脱は、2トップを組むFW鄭大世にも強い刺激を与えた。昨季途中に加入し、そのときからチームメイトのゴールをサポートする"黒子役"に徹することを宣言。今季も自身の目標得点数は「10」と控えめだった。

 しかしチームが低迷し、パートナーの大前までが離脱すると、「積極的にゴールを狙っていく」と果敢なスタイルに変貌する。徐々にゴール数を伸ばして、第25節終了時点で当初の目標をあっさりクリアしてしまった。

 終盤戦に向かうと、その破壊力は一層増した。J2タイ記録となる7試合連続ゴールを達成し、復活した大前との5戦連続のアベック弾まで披露した。結局、通算26ゴールを決めて、J2得点王を獲得。アシスト数もチームトップの10を記録するなど、まさしくチームの快進撃を支え、J1昇格の最大の立役者となった。

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