札幌のJ1昇格をグッと引き寄せた、熱いハートと終了間際の劇的ゴール (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 その積極采配が実を結んだのは、71分。DF福森晃斗のFKを都倉がニアサイドで合わせて、1−1の同点に。高さのあるヘイスが加わったことでマークが分散したことは自明の理であり、交代策がもたらした同点弾だったのは間違いなかった。

 もっとも、今の札幌に必要なのは、「勝ち点3」という良薬だ。1−1のままで終わってしまえば、首位から陥落する可能性もあった。その意識はチーム全体に共有されていたのだろう。残りの20分弱、札幌は球際の強度をさらに高め、前へ前への意識をより強めた。一方で、焦りの色も濃く、攻撃の精度を高められない。気持ちばかりが先走り、なかなか決定的なチャンスを生み出すことができなかった。

 ところが、最後にドラマが待っていた。5分と表示されたアディショナルタイムも残りわずかとなったとき、最終ラインからのDF河合竜二のロングフィードが裏に抜け出ると、そこに反応したのは内村だった。目一杯伸ばした右足で空中のボールに合わせると、飛び出してきた相手GKの脇を抜き、千葉のゴールを揺らした。

 劇的なる結末だった。もがき苦しみ、ともすれば転落しかねない状況のなか、1点のビハインドを執念で追いつき、さらに最後の最後で奇跡とも言える逆転ゴールを生み出したのだ。

 まさに、ハートの勝利である。とはいえ、この日の札幌の戦いには、今季の強さの象徴が散りばめられていたのも事実だ。

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