札幌のJ1昇格をグッと引き寄せた、熱いハートと終了間際の劇的ゴール (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 今季の札幌が躍進した要因は、リーグ随一を誇った堅守にあった。第9節からの5試合連続を含め、1−0の勝利が11を数えるように、少ないチャンスをモノにし、1点を守り切るサッカーで勝ち点を積み上げてきた。ところが、勝利から見放された10月以降は、完封どころか複数失点を喫する試合が増加。チームの拠り所を見失っており、守備の修正こそが求められていた。

 ただ、守りの意識が強く出すぎてしまったのだろう。重心が後ろに傾き、全体が間延びし、バイタルエリアにスペースを与えてしまっていた。後半に入っても、その位置からフリーでシュートを打たれる場面が目につき、追加点を奪われてしまう可能性は十分にあった。

 それでも札幌が2失点目を許さなかったのは、シュートを打たれても懸命に身体を投げ出し、たとえ届かないようなボールにでもあきらめずに競り合いに行くような、鬼気迫るほどの勝利への執念があったからだ。

 ピッチ上の選手だけでなく、指揮官にもまた執念がみなぎっていた。1点ビハインドで迎えた後半、ボランチを1枚削ってFWの内村圭宏を投入して3トップに変更。67分にはウイングバックのMF堀米悠斗に代えて長身ストライカーのFWヘイスを送り込んだ。FWジュリーニョがサイドに回ったため玉砕覚悟の4トップ――というわけではなかったが、エースのFW都倉賢も含めて、ピッチ上には4人のFWが並んだ。

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