闘莉王の「選手にできることは限られる」発言が示すグランパス降格の闇 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki YUTAKA/アフロスポーツ●写真

 もっとも、小倉監督は最悪のクラブマネジメントの一端でしかないだろう。

「もっと早く見切りをつけ、監督交代をしていれば」という意見は正しいが、本質ではない。小倉を監督に据える組織が、正しい監督交代のタイミングを図れるはずはないのだ。

「自分はグランパスで優勝させてもらって、(歴史や伝統を)肌で感じてきている。(降格は)悲しすぎる」

 田中マルクス闘莉王は言葉を選びながら、意味深長な発言をしている。

「もう一度、強いグランパスを作るには、全員が同じ方向に向かって手をつないで前進していかなければいけない。ただ、僕ら選手にはやれることは限られる。降格は自分の責任、力が足りなかったということですけど」

 小倉を監督に据えたのは、トップの久米社長ではない「派閥」と言われるが、ここですでに権力の分裂が起こっていた。クラブとしてのガバナンスが正常に働いていなかった。別の派閥のトップにとっては、現チームの不振に痛痒(つうよう)は感じない、という「ねじれ」が起こった。戦犯は「誰か」よりも、「クラブの体質そのもの」だったのである。

 降格が決まった翌日、久米社長は引責辞任を発表した。リーダーとして当然だろう。その流れで、ボスコ・ジュロヴスキー監督、闘莉王の退団も確定していったと言われる。

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