闘莉王の「選手にできることは限られる」
発言が示すグランパス降格の闇

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki YUTAKA/アフロスポーツ●写真

 目に見える形では、GM補佐だった小倉が監督経験なしに監督に就任、GMまで兼ねた点が際立つ。

 開幕以来、選手は「素人」監督に混乱した。奮戦すればするほど袋小路に入った。

「(田中マルクス)闘莉王と契約を更新しなかったのは、実績のあるベテランの影響力を新米監督が嫌ったから」と関係者は洩らした。発言内容の真偽は別にして、世間の目にもそう映ったことだろう。つまり、監督が統率力を発揮できなかったのだ。

 サッカー監督は、日本人が考える「監督」よりも難易度が高い。例えばジョゼップ・グアルディオラ、カルロ・アンチェロッティ、ジネディーヌ・ジダンのような「真のレジェンド」でさえ、下部リーグから監督実績を積んでいる。それもコーチではなく、決断を下す監督として。そうやって培った経験なしでは、重圧の中でまともに仕事はできない。

「敗北の落胆を読み取られる指揮官は選手の信頼を得られない」と言われるが、小倉監督は連戦連敗の中、試合後のインタビューで憮然(あるいは悄然)とした姿を見せていた。

 小倉監督は、日々のトレーニングで守備の原則すら植え付けることができなかった。チームは最多失点でディフェンスから崩壊。攻撃に関しても、頭から蹴り込むだけの試合もあって、何ひとつ手をつけられていない。

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