どん底の森﨑浩司を救った、森保一監督とふたりだけの早朝ランニング (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 少しずつ体調が回復し、全体練習に復帰した後も、森保監督は浩司の心の声に耳を傾け続けた。練習を終えたグラウンドで声をかければ、芝生の上に腰を下ろし、気が済むまで話に付き合ってくれた。ふたりだけの青空ミーティングは1時間では終わらず、長いときには2時間に及ぶこともあったという。

 浩司自身もわかっていた。自分の体調不良が理由で練習を休んでいる選手に、チームを束ねる指揮官がそこまで付き合う義理がないことは......。しかも、これはシーズン中の話である。ただでさえ監督は、練習メニューの考案や次の試合に向けた準備で忙しい。それにもかかわらず、一度も嫌な顔を見せることなく、森保監督は付き合ってくれたのだ。

「森保さんが監督だから、復帰するのは難しいと考えながらも、もがいたんだと思います。僕がまたピッチに立つことができたのは、監督の支えがあったからだと思っています」

 浩司は引退を決意した今シーズンも、何度も、何度も森保監督に相談をしていた。そこには双子の兄・和幸と同じように、すべてを打ち明けられる関係性が築けていたのだろう。

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