どん底の森﨑浩司を救った、森保一監督とふたりだけの早朝ランニング (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 2005年に初めてオーバートレーニング症候群の兆候が現れてから、これで何度目の離脱だろうか......。ひどいときには日常生活はおろか、生死の縁を彷徨(さまよ)ったこともある。それだけに、ふたたびピッチに戻るのは難しいのではないかと、朦朧(もうろう)とする頭のなかで考えていた。

「自分としては、そのときも"引退"の二文字がチラついていた。同じ症状になるカズ(和幸)には、どん底に落ちる前から『今の状態が普通だと思え』って言われていたのに、それを僕は受け入れられなかった。身体もどんどんしんどくなっていくから、今回はもう、ちょっと無理だろうなって思っていた。正直、本音を言えば、あきらめていた部分もありました」

 ただ浩司は、妻に「そこで休んだら本当に終わっちゃうよ」と言われ、重い身体を引きずりながら、自宅近くをランニングすることだけは続けていた。そこには「自分の意志はなく、周りの人の支えや助けがあったから走ることができた」と振り返る。

 そんな浩司を支えてくれたのが、妻や兄・和幸とともに、チームを率いている森保監督だった。あるとき浩司は指揮官から、「何かあったら、いつでも相談に乗るからな」と言われた言葉を思い出した。そこで森保監督に電話をすると、思い切ってお願いしたのだ。

「森保さん、朝、一緒に走ってもらえませんか?」

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