森﨑浩司とのかけがえのない思い出。1年前に聞いた「引退」の二文字 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「若いときは純粋にライバルで、カズ(和幸)には負けたくないという思いだけでプレーしていた。でも、体調不良になるようになってからは、誰よりも自分のことをわかってくれるよき理解者だった。カズからは体調不良になるたびに、『今の状態が普通だと思え』って言われていたんですけど、自分はずっとそれを否定し続けていた。でも、あるとき、カズに言われたとおりにしてみようと思って、開き直ってみたら、自分のことを客観的に見られるようになった。それからは、どん底まで落ちることはなくなりましたね」

 その後、浩司が体調不良で練習を休むことはなくなった。ただ、離脱と復活を繰り返すなかで、彼の体力と気力は蝕(むしば)まれていった。

 だから今シーズンは、彼のプレーする姿をこの目に焼きつけようと決めていた。2度の肉離れに見舞われたときには、「もう空っぽです」と心情を吐露されただけに、夏になってプレーできる状態になったときには、サテライトリーグの試合を見に足を運んだ。その後にメンバー入りし、試合に出られるようになったときには、現役続行に気持ちが傾いて悩んだ時期もあった。それでも最後の決め手は、1年前のあの日に聞かされた思いと同じだった。

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