ルヴァンの女神はレッズに微笑む。ガンバがわずかに見せた「心の隙」 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 G大阪にしても、浦和にしても、崩れたほうが負けるという緊迫感が常に付きまとっていたのだろう。のどもとにナイフを突きつけたまま、にらみ合いが続く。そんな任侠映画のワンシーンを見ているかのような展開だった。

 ただ、ビハインドを追っている浦和には、どこかでリスクを負う必要があったはずだ。そこで転機となったのが、76分の交代策。交代直後にCKから生まれたFW李忠成の同点ゴールの背景には、「代わって入った選手に決められたのだから、マークとか集中力とか言われてもしょうがない」と今野が指摘したように、G大阪側に生じたわずかな隙を逃さなかった浦和のしたたかさがあった。

 結局、その後は両者ともに崩れることなく、勝負はPK戦へとゆだねられる。PK戦は運を味方につけたほうに勝利の女神が微笑むと思われがちだが、選手たちの見立ては違った。FW興梠慎三は言う。

「PKは運と言われがちだけど、コースをしっかりと突いて蹴れば入るし、GKとの駆け引きもある。そういう意味では、全員が決められたのはよかった」

 一方のG大阪は、4人目のFW呉屋大翔が失敗。長谷川健太監督によれば、本来は別の選手に蹴らせようと思っていたそうだ。しかしその選手が拒否し、志願した呉屋にキッカーを任せたという。5人全員が立ち向かった浦和に対し、G大阪は勇気を持てなかった。最後の最後に見せた心の隙が、勝敗を分けてしまったのかもしれない。

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