福田正博が指摘。ハリルホジッチに欠けていた「代表監督に必要な資質」 (3ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

 ハリルホジッチ監督は、日本人選手にヨーロッパでプレーすることを望み、海外移籍を奨励しているが、レベルの高い環境に身を置くと、選手個人のレベルが向上するというメリットがある反面、レベルの高さゆえに日本代表の中心選手でさえ、出場機会を失う危険性をはらんでいる。これも、チームに欧州組が増えることのデメリットだ。

 たとえ控えであっても、「練習でレベルの高い環境に身を置いた方が選手は成長する」と考える人もいるかもしれない。しかし、私はそうは考えていない。選手は、真剣勝負の実戦を経験して初めて成長できる。試合で経験した課題を改善するために練習に取り組み、その課題を克服して、次の試合で結果を出す。この繰り返しがあって選手は成長していく。

 これは若手に限ったことではない。本田圭佑のような百戦錬磨の選手であっても、クラブで試合に出場しているかどうかは重要だ。どんなに実績がある選手でも、実戦から離れていると、試合勘は鈍り、体力は落ちていく。練習でどれだけ追い込もうと、相手が死に物狂いで向かってくる試合と、チームメイト同士での練習では、おのずと差が生じる。わずかな違いとも言えるが、それが1シーズン積み重なると、大きな差になる。ベンチを温める試合が増えれば増えるほど、選手はコンディション調整が難しくなっていく。

 つまり、代表選手に欧州組が増えるということは、コンディションに不安を抱える選手が増える可能性もあるということ。そのため、ハリルホジッチ監督に求められるのは、「全選手のコンディションの見極め」になる。これは、あらゆる国の代表監督にとって重要な資質だ。

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