王者らしからぬ「迷走」ぶり。アントラーズで何が起こっているのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「(1失点目の)失点の時間帯、2失点目のやられ方は反省しなければならない」

 体調不良を理由にベンチを外れた石井正忠監督に代わり、この試合で指揮を執った大岩剛コーチはそう語っていたが、その反省点にこそ、鹿島らしからぬ様子が表れている。

 1失点目は45分。つまり、前半終了間際である。しっかりリードを守って前半を折り返さなければならない時間帯での失点で、相手に勢いを与えてしまったのは明らかだ。

 そして2失点目は、敵陣に攻め込んだ状態から、2次攻撃を仕掛けようとしたところでボールを奪われ、カウンターを受けたものだ。確かに「やられ方」としてはかなり軽率であり、あまりに鹿島らしくない。DF昌子源は「基本的にこういうのが失点パターン。変なところで(ボールを)取られて(失点する)ということが多い」と嘆いた。

 だが、昌子が「何度も危ないシーンを招いた」と話したように、鹿島らしくなかったシーンは失点の場面だけではない。

 例えば、試合開始早々の10分の場面。カウンターからFW伊藤翔にクロスバー直撃のシュートを打たれているのだが、このときも守備の人数は足りていながら、ドリブルで持ち上がってくるDFファビオを誰が潰しにいくのか、はっきりしないままボールを運ばれ、クロスを入れられたところからピンチは始まっている。

 ひとつひとつは些細な判断の遅れであっても、それが連鎖して大きな歪みを生んでいる。チーム全体での守備の仕方が、どこかかみ合っていない。そんな印象は90分間を通じて強かった。これでは失点が増えるのも無理はない。

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