浦和を幻惑した「あちこちにいる」中村憲剛。川崎Fが大一番を快勝 (5ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 この一戦が今季を占ううえでの天王山だったことは間違いない。だが、川崎にとってこの勝利にさらなる価値を与えているのは、敗戦直後の勝利だったことだ。川崎は前節、サガン鳥栖に敗れて今季2敗目、セカンドステージ初黒星を喫している。

 浦和戦でもし敗れていたら、大一番を落としたことに加え、今季初の連敗を喫することになり、「俺たちは今季、一度も連敗していない」という自信の寄りどころを失ってしまうところだった。

 だが、ファーストステージ第8節の浦和戦で今季初めて敗れたあと、アウェーでガンバ大阪を下したように、今回も鳥栖戦での敗戦のショックを断ち切って、直接対決をモノにした――。川崎はまたひとつ、自分たちを信じ切れる材料を手に入れたのだ。

「まだ残り8試合もあるから、優勝うんぬんを言うのは早い。このままの調子で、ひとつ、ひとつ勝っていきたい」

 埼玉スタジアムのエントランスを出て、チームバスへと向かう直前、中村は自身に言い聞かせるように言った。

 川崎の初戴冠がグッと近づいたのは、間違いない。だが、まだ何が起きるかわからない。わずか数カ月前、つかみかけていたタイトルを逃したばかりの彼らは、そのことを十分にわかっているようだった。

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