浦和を幻惑した「あちこちにいる」中村憲剛。川崎Fが大一番を快勝 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 ファーストステージで川崎が喫した唯一の敗戦は、浦和に対するものだった。浦和の激しいプレッシングを受けた川崎は思うような攻撃を繰り出せず、試合後、小林悠や大久保嘉人も「完敗だった」と口をそろえたものだ。

 その前へのプレスを封じることが、中村のもうひとつの狙いだった。

「向こうはもっと前から(プレスに)行きたかったと思うんですけど、俺はそれをやらせたくなかった。俺が2ボランチの背後を取れば、ひとりは間違いなく俺を見てくる。そうするとリョウタとネットのうちのひとりは必ず空くので、向こうは前から行っても奪えない」

 後ろ髪を引かれるように阿部が背後の中村を気にしながらポジションを取る姿こそ、浦和のプレッシングを封じるために中村が仕掛けた、ポジションレスのプレーが効いている証しだったのだ。

「(同じシステム同士が戦う)ミラーゲームの場合、どこで数的優位をつくるか、どこをミラーにしないかがすごくポイント。それは、どう考えても自分のところでしょう」

 振り返れば、昨季のセカンドステージ16節、埼玉スタジアムで行なわれたこのカードも、中村のポジショニングがゲームのカギを握っていた。大久保が不在だったこの試合で中村は、3−4−3のセンターフォワードとして起用された。

 求められたのは、最前線で体を張ってボールをキープすることではない。マイボールになった瞬間、中盤に降りていって、バイタルエリアでボールをキープしてチャンスを創出する。いわゆる"ゼロトップ"として前線から姿を消し、浦和の守備陣を混乱させる役目だったのだ。

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