FW3番手の扱いに佐藤寿人が吐露。「必要としてくれるところへ...」 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 長年エースとして君臨してきたプライドは、現状を許さない。少しためらいながら、佐藤はこう続けた。

「自分を必要としてくれているところに行こうか......と考えたこともある」

 広島の歴史を築いてきた選手としては、実に重い言葉だろう。おそらくこれを書いてしまうと、佐藤の立場がさらに危うくなってしまうのではないか――。その旨を告げると、「そこはサッカー選手なら、当然の想いですから」と、こちらの想いを制した。

 結局、佐藤は広島に留まった。移籍市場はすでに閉まっているため、今季が終わるまで広島でプレーすることが決まっている。

 今後も試合に出られる保証はない。そのなかで、何ができるのか......。苦しい状況下での立ち振る舞いこそ、真のプロフェッショナルの在り方を決める。

 味方が点を獲れば、喜びをあらわにして仲間を迎え、危険なファウルにさらされれば、ベンチを飛び出して心配そうに見つめる。数々の得点記録を作り、広島にいくつものタイトルをもたらしてきたリーダーは、ベンチからチームの勝利を願い、いつ出番が来てもいいように、心身ともに万全の準備を整えている。

「選手を決めるのは監督なので、そこは自分ではどうしようもないこと。そこを考えてもストレスが溜まるだけなので、自分ができることを考えるだけですよ」

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