【恩田社長の600日】特別寄稿「解任されたラモス監督の功罪」 (4ページ目)

  • 恩田聖敬●文 text by Onda Satoshi  photo by AFLO

 私は権利と義務の順番を重んじる人間です。ラモス氏のように、数々の実績を残した方が、待遇改善を求めるのはわかります。しかしながら、何も成していない者が、虎の威を借る狐のように、ラモス氏を利用するのが許せませんでした。

 ひとつ具体的なエピソードを紹介します。Jリーグのクラブは、クラブが拠点を置く地域において、地域を活性化させる活動をする使命を持っています。地域に生かされ、地域に愛されてこそ、クラブは存続できるのです。当然クラブに所属する選手には、その活動に協力する義務があり、統一契約書にも明記されています。義務以前に、誰のおかげでサッカーができるのかという感謝の気持ちがあるなら、進んで協力するはずです。

 FC岐阜はこの地域の活動に参加した選手に、寸志を渡していました。これは、現在と違い、十分な年俸を払えなかった時代に、今よりはるかに多くの活動に参加してくれた選手に対して、クラブとして選手に対し、せめてもの気持ちとして始まったと聞いています。活動に対する金銭的なお礼は、全くないクラブもめずらしくないと聞いています。

 2015年シーズン、耳を疑う事件が起きます。選手会から「活動のお礼が安すぎるから増やしてくれないと協力しかねる。監督に相談したら、選手会からクラブに伝えたら、と言われました」という申し入れがあったのです。

 しばらく、開いた口が塞がらず、その後烈火の如くに怒り、「そんなことを言っている選手を、今すぐ私の前に連れて来い。言いたいことがあるなら、直接私に言え。その場でクビにしてやる!」と言い放ちました。在任中最大の怒りでした。そして、うちの選手はここまでおかしくなったかと自分の不明を恥じました。選手を指導するうえで最も大切な、サッカー選手以前の人間力の強化が、まるで出来ていなかったのです。

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