ポーランド移籍も封印。豊田陽平「だから鳥栖はやめられない」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 しかし、豊田は自分の野心だけで動けない立場だった。

「鳥栖がこんな状況(ファーストステージ15位)なのに、移籍することは現実的には考えられなかったですね。今は残留がマスト。まずは得点パターンを構築しないといけないと思っています」

 豊田はオファーを真剣に受け止め、家族にも相談している。しかし、海外移籍の思いは封印せざるをえなかった。少なくとも、今はない、と判断した。降格圏に落としたまま、苦楽を共にしたクラブを離れるわけにはいかなかった。

「これだから、鳥栖はやめられない!」

 セカンドステージ開幕戦で劇的ゴールを記録し、ヒーローインタビューを受ける豊田は高らかに吠えている。そこには秘めたる思いがあった。

「もし、シーズンが終わっても話が来たら......そのときはまた改めて考えたいですね。一度は海外でプレーしたい。その気持ちは変わらずにあるので」

 豊田は本心を打ち明け、目の前に広がる戦いに向かう。

「昨 シーズンは1月のオフ返上でやって(アジアカップに出場)、終盤は少しコンディションを崩してしまって。そこで今シーズンは足首を完治させてから、キャン プは万全で臨みました。とにかく、走り倒しましたね(笑)。今シーズン、Jリーグで一番、走っているチームじゃないですか? 過去の鳥栖も、これだけ走っ たことはないでしょう。練習試合を行なった日ですらも走っていましたからね。相当な走行距離になっているはずです。まあ、これから夏になって暑くなってき たら、走ってきた量が活きてくると思うんですけど」

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