豊田陽平が語る「イタリア人監督の要求とサガン鳥栖の変化」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 鳥栖の決勝点はカウンターからで、ポゼッションが得点に至ったわけではない。パスをつないでいると言っても、フリック(ボールをかするパス)を入 れたり、振り向いたり、挑戦的な縦パスを入れるシーンは乏しかった。タイミングとしては長いボールを蹴るのが有効な場面もあっただろう。実際、ゴールの匂 いがしたのは、豊田が前線で敵センターバックに競り勝ったときだった。

 しかし、この夜の主役はポジティブな側面に目を向けた。

「(精度の高いクロスが入ったら)3本に1本、いや、2本に1本は決められると思うんですけどね」

 そう語る豊田はFC東京戦、100%の確率で決めている。横からのボールに対する強さは、Jリーグでは比類がない。高さ、強さ、そして駆け引きの巧さは、海外で正当に見定められていた。
 
 今年6月、ポーランド1部リーグの2クラブから獲得の打診があった。豊田本人は当初、半信半疑だった。しかし、一つのクラブからは年俸数千万円など条件面を記した契約書が送られてきた。

「ポーランドという国のことは正直、あまり知らなかったので、ホント? という感じだったんですが。そうやって評価されたことは、素直に嬉しかったです。自分で探したわけでも、ねじ込んでもらおうとしたわけでもなかったので。実力や実績を値踏みしてもらったのかなって」

 海外移籍はあるのか――。豊田は決断を迫られた。
(つづく)

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