サガン鳥栖がEUROのイタリア風に? 「つなぐ」効果で劇的勝利 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 フィッカデンティは満足げに語っているが、イタリア人戦術家の面目躍如たる場面は最後の最後に訪れる。

 86分にGK林彰洋が決定的なピンチを防いだ後だった。明らかに潮目が変わる。94分、早坂良太が右サイドで一人はがしてから池田圭へクロスが入り、同点弾が決まる。終盤に投入した2人によるゴールだった。そして1分後には左サイドを高橋義希が駆け上がってクロスを折り返し、エースの豊田がヘディングで豪快に叩き込んだ。

 劇的な逆転劇は偶然か、必然か。

「マッシモは、『つないでいこう』というのはずっと言っていますね。実際、つないでいたことがジャブのように効いていたのかもしれません」

 この夜の主役になった豊田が語っているように、ポゼッションは少なからず、敵にダメージを与えていた。鳥栖が猛攻に転じたとき、東京の選手はことごとく後塵を拝した。

 実はフィッカデンティ監督はファーストステージから一貫して、ポゼッションを選手に求めている。それはFC東京を指揮した2シーズンとは大きく違う点だろう。

「最終ラインの選手がボランチにパスをつけるのも嫌った」と、かつてFC東京の選手たちが語っていたように、イタリア人監督は徹底的にリスクを避ける戦術を選択していた。ウノゼロ(1-0の勝利)を遂行するには、自陣でボールを失うことはもってのほかだった。我慢しきれなくなった敵のミスをひたすら待ち構えた。

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