満員の観客と笑顔と自信。フロンターレが手にした2位以上の「財産」 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 川崎にとって、タイトル獲得が悲願なのは間違いない。だが、地元の人たちに愛され、スタジアムが毎試合、満員になることもそれと同じくらい大事なことなのだ。

 中村に次いでクラブ在籍期間が長く、“シルバーコレクター”の時代を知る数少ない選手でもあるDF井川祐輔も、最終節のスタジアムの雰囲気には感慨深いものがあったようだ。

「ちょっと異様な雰囲気というか、いい緊張感の中でやれて幸せでしたね、33歳にして。若い選手たちも『優勝争いをすれば、こういう雰囲気になるんだ』『優勝争いって、こういうことなんだ』って感じられて、またこれを味わいたいなって感じたと思うんです。(リーグ2位になった)2006年の頃も、初めはそんなに(スタンドは)埋まっていなかったのに、勝つにつれてお客さんが増えていって、期待されているんだっていうのがひしひしと伝わってきた。自分たちが結果を出すことによって、お客さんを呼び込み、巻き込んでいく。それが“常勝軍団”であることのメリットだと思うので、毎年優勝争いをしなければいけないなって改めて思いました」

 川崎が優勝争いを繰り広げたのは、2009年が最後だった。その後、高畠(勉)体制、相馬(直樹)体制を経て、2012年4月に風間八宏監督が就任して以降、スタイルを一から作り上げ、ようやく成熟して7年ぶりにたどり着いた優勝争いの場だった。中村と同様、過去に5度も悔しい思いをした井川が言う。

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