ナイーブだったレッズ、老獪なアントラーズ。J1の大一番を分けたもの (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 先制されたあと、見方によっては浦和が再び主導権を取り戻したように見えた。しかし、実際はどうだっただろうか。ドリブル突破が武器のMF駒井善成を投入し、強引にサイドを崩しにかかったが、前半20分までのように、鹿島の守備陣を翻弄していたわけではなかった。

 今季の浦和が強さを見せつけたゲームのひとつに、第8節の川崎フロンターレ戦(1-0)が挙げられる。互いに攻撃力を売りにしたチーム同士による真っ向からのぶつかり合いは、浦和が90分間主導権を握り、1−0で川崎をねじ伏せた。試合後、川崎には「完敗」を認める者が何人もいた。

 うまくいっているときは、とことん強い。うまくいかないときに、どう戦うか。改めて、DF遠藤航がこの試合を振り返る。

「鹿島は守るときはしっかり守って、少ないチャンスをモノにするという戦いを徹底していた。そのことは理解していたし、僕らも焦らずやろうと思っていたんですけど、結果を見れば、鹿島のゲーム運びのうまさにやられた形になってしまった」

 流れが悪いときには、チーム一丸となってじっくりと耐え、あの手、この手で少しずつ主導権を奪い返して、自分たちの土俵に相手を引き込む――この日、鹿島が示した試合運びは、まさに浦和がこれから身につけなければならないものだろう。

 そうした老獪(ろうかい)な試合運びの中心に立つのは、今や「浦和は彼のチーム」と称されるようになった、柏木をおいてほかにはいない。

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