守ったFC東京、攻めた浦和。それでもACLで全滅した日本勢

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 失点シーンはロングボールを放り込まれたものだが、まず出し手に対して何ら圧力を加えられていない。これは専守防衛の罠そのもの。それでも、吉本一謙はヘディングで競り勝ってクリアしている。言い換えれば、守ることそのものは機能していた。

 しかし上海のエース、エウケソンは総攻撃の瞬間、巧妙にペナルティアークまで下がった。ズルズルと下がるラインと、そこに飲み込まれる選手の姿を冷徹に見抜いていた。そして特筆すべきは、エウケソンが味方を得ていることで、瞬間的に2対1の局面になっていたのである。右足を強烈に振り抜いたエウケソンのシュートをGKがこぼし、ウー・レイが叩き込んだ場面は運命的ですらあった。

「90分間を受け身で戦うのは厳しい」という主将でDFの森重真人の言葉は重い。

 初戦の2-1というスコアの時点で、守勢に回るのは危険だった。ACLはアジア王者を決める大会で、残留を目標とする“弱者の兵法”がまかり通る舞台ではない。中盤を捨て、自陣を明け渡して90分守りきれたら、それこそ僥倖(ぎょうこう)だろう。自軍ゴールに近いところで守り続けていたら、必ず事故は起きるのだ。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る