チームの中心軸。鹿島のサッカーは小笠原満男を見ていればわかる (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 攻撃から守備への切り替えで重要なのは、1本目のパスをいかに防ぐか、だ。1本目のパスをうまくフリーの選手に出されてしまうと、一気にカウンターにつなげられる危険性がある。裏を返すと、最初のパスを出させることなく囲い込んでしまえば、すぐに奪い返すことができる。

 そうした原則がある中、ボールを奪った大宮の選手がパスをつなごうとしても、すぐにプレスをかけにいく。あるいは、パスが出そうな選手に寄せていく。小笠原はそれらの対応の速さで群を抜いていた。

 しかも対応が速いだけでなく、狙いを定めたボールに対しては激しく体を寄せていく強さもあった。一見地味にも見えるこうした役割を、90分間集中力を切らすことなく、小笠原は忠実に果たし続けた。

 実際、小笠原のボール奪取からチャンスが生まれたシーンは何度もあった。あるいは、パスが出そうな選手のところへ小笠原が素早く寄せたために、相手選手がパスを出せなくなったシーンもあった。特に大宮の攻撃の中心であるMF家長昭博から何度もボールを奪い取ったことは、相手の戦意を削ぐという点でも効果的だった。

 また、メンタル的な部分でチームを支えられるのも、こうしたベテラン選手ならでは、だろう。

 大宮戦でも主審の判定にイライラを募らせていたMFカイオが、執拗に主審に対して文句を言う場面があった。そんなとき、22歳の血気盛んなブラジル人アタッカーに歩み寄り、なだめていたのは小笠原だった。もし小笠原の配慮がなければ、カイオには間違いなくイエローカードが出ていたはずだ。

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