通算ゴールを161に伸ばした大久保嘉人が語る、「今は不安しかない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki  高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

 そうFC東京の選手が感嘆したように、そのプレーは読み切れない。前半、象徴的な場面があった。大久保は敵を背にパスを受けながら鋭くターンし、そのままシュートまで持ち込もうとした。しかし、その動きを読めなかった主審が前に立ち塞がって、障害となっている。

 大久保は2試合連続得点で、Jリーグ得点ランキングも5得点と2位に浮上した。年齢だけで彼を括ろうとする関係者がいたら、その目は節穴だろう。4年連続Jリーグ得点王も不可能ではない。

「ゴールしても、負けたら意味がない。最近は負けると、得点したことは忘れてしまう。それよりも、ああしていれば勝てたのに、とずっと考えてる」

 それがJ1通算最多得点記録を持つ男の流儀だろうか。いや、流儀というような堅苦しい言い方は彼には似合わない。本能的に勝利を求め、敗北を憎むといったところか。

 川崎はFC東京に逆転勝利し、首位を守った。メディアは優勝への意気込みをエースから引き出そうと、「次の浦和戦が重要?」「GWの連戦が鍵?」とコメントを引き出しにかかっている。しかし大久保は同調しない。

「まだまだこれから。厳しい戦いが続くから、粘り強くね。1試合1試合」

 それは本音だろう。タイトル獲得に向け、彼は本気だ。

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