3強を抜いた川崎フロンターレが見せる、最もモダンなサッカー (4ページ目)

  • 木崎伸也●文 text by Kizaki Shinya
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 とにかくセンスが必要で、ひとりでもできていない選手がいると組織に大きな穴が開き、スパーンとパスを通されてしまう。多くの人が「なぜ守備で棒立ちなのか」と疑問を持ったのも当然だ。あまりにも簡単にやられるシーンが多かった。

 それでも風間監督は、自分のやり方を貫いた。2014年も、2015年も、この守備をあきらめず、さまざまなメニューを用意して辛抱強く取り組んだ。例えば、長方形のボックスに守備者3人を入れ、後ろにパスを通させない、といったメニューだ。風間監督の守備言語もよりかゆいところに手が届くようになり、次第に選手たちは感覚をつかんでいった。

 2015年後半、ついにこの執念が実り始める。FWレナト(→広州富力/中国)が7月に引き抜かれてしまったのは攻撃面では痛かったが、守備面では穴が開きづらくなった。守備練習の成果が最も見られた試合が、10月の広島戦だ。アディショナルタイムのゴールでフロンターレは1-2で敗れたものの、高い位置でボールを失ってもすぐに奪い返し、広島に自由を与えなかった。

 まさにこれはドイツで言うところのゲーゲンプレッシングだった。「ボールを奪われた瞬間にかけるプレス」のことで、クロップがドルトムント時代に流行させた戦術用語である。

 後日、この感想をぶつけると、風間監督はこう答えた。

「最初から言っていただろ。圧倒的に攻め込むことができ、さらにひとりひとりの守れる範囲が広くなれば、いずれこういう守備ができるようになると。ゲーゲンプレッシングをやろうとしなくても、自ずとそうなるんだ」

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