負けても焦るな。FC東京がスタイル大変換で味わう産みの苦しみ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

「今日の試合を見れば、相手の監督がイタリア人だと分かる(笑)。守備の組織がすばらしかった。もう少し前からプレスにくると予想して準備してきたのだが、そこ(引いて守りを固めたこと)は驚きだった」

 確かに、昨季のFC東京を見ていて、フラストレーションが溜まるサッカーであったのは確かだ。当の選手自身も少なからず、同じフラストレーションを感じていたに違いない。

 選手個々の能力を見れば、J1でもトップクラスの戦力を備えながら、引いて守りを固めることしかできない。しかも、それで優勝するならまだ納得感もあるが、結果は年間勝ち点で4位。FC東京が今季に向けて大きく舵を切ったことは理解できる。

 実際、志向するサッカーを大きく転換し、今季公式戦初戦となったAFCチャンピオンズリーグのプレーオフで、チョンブリFC(タイ)を9-0でねじ伏せたときは、今季のFC東京はおもしろいと大いに期待が高まったものだ。

 だが、やはり自分たちでボールを保持して主導権を握り、それで勝ち切ることは簡単ではない。その後のFC東京は、公式戦2連敗(ACLグループリーグ全北現代戦1-2、J1ファーストステージ第1節大宮アルディージャ戦0-1)。目指すサッカーはそれなりの形は見せるものの、ゴールが遠い試合が続いている。こうしたサッカーを目指すとき、必ずと言っていいほどぶつかる壁だ。

 象徴的だったのは、大宮戦である。

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