イタリア人新指揮官が、サガン鳥栖にガッチリかけた鉄壁の錠前 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Kyodo News

「行くべきところで行かなければ、はめられず、プレスの意味がない。プレスをかけるときは後ろを気にしなくていいから。行けるところまで行け!」

 それがフィッカデンティの指令だという。自分たちの持ち味を出すよりも、相手の嫌がるポイントを抉(えぐ)る“イタリア式”である。

 昨季まで監督を務めたFC東京で、フィッカデンティは「パス戦術を一切捨てたことが限界だった」と言われた。ほとんどボールを使った練習をせず、ボランチにボールをつけることさえ嫌った。ボールをつなぎ、テンポを作る、という能動的思考はない。閃(ひらめ)きや工夫はなく、退屈にも映る。しかし特記すべきは、カルチョの真髄のような守備力とプレーの効率性を高めた点だろう。

 鳥栖はFC東京ほどボールスキルに長けた選手が多くない。秩序や規律にも慣れてもいる。イタリア式回路が機能する可能性は十分にある。

「前半は攻撃もコンビネーションを使って崩してゴールし、いいテストマッチになった。誰が戦えるのか。それを見極めながら、開幕に向けてメンバーを選びたい」

 イタリア人はご満悦だったが、得点はプレスではめ込み、もたつかせてからのショートカウンターだった。やはり攻撃力は乏しく、実質的にはロングボールを豊田陽平が競り勝ち、それをプレスにはめてシュートに持ち込むか、トップ下の鎌田が独力で作り出すか。鹿児島が相手でも、中盤から前にボールをまともに運べなかった。しかし、守備そのものは堅固で組織は崩れていない。

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