カンプノウ並みの衝撃。吹田スタジアムでサッカー観戦が変わる (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text & photo by Shigeki Sugiyama

 35度以上ありそうな傾斜角。日本で最も見やすいスタジアムと断言したくなる。収容人数4万人。総工費はおよそ140億円だ。コストパフォーマンスに優れている点も、このスタジアムの魅力になる。

 140億円でこれほどのスタジアムができるのに、新国立競技場の建設にはなぜ1500億円以上もかかるのか。8万人収容なら、140×2=280億円でできるのではないかという声を聞く。だが、その答えは、吹田スタジアムに足を運んでみれば実感できる。「できるにはできるだろうが……」がその答えだ。

スタジアム内のトイレには長蛇の列ができていたスタジアム内のトイレには長蛇の列ができていた 率直に言って簡素だ。日本で一番簡素なスタジアムかもしれない。何より頼りなく見えるのは内部施設。建物全体が「薄く」容積がないので、記者会見場などイベント開催に必要なスペースが手狭なのだ。分かりやすいのはトイレの数。ハーフタイムにスタンド下のコンコースを歩いてみれば、各トイレの前には数十メートルの行列ができていた。絶対数が足りない。「薄い」ので、作るべきスペースを確保できないのだ。

 階段を上り下りする時に響き渡る音も安普請ゆえだ。重厚感ゼロ。格安マンションさながらの高くて軽い音。階段の一部は鉄筋コンクリート製ではない。工事現場に設置されているような金属製がその多くを占める。カンカンと安っぽい音が響き渡るのはそのせいだ。

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