福田正博が分析。五輪代表・手倉森監督が見せた「勝負師の采配」 (2ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburou

 アジア最終予選での手倉森監督は、毎試合のように選手交代起用が的中した。なかでも韓国との決勝戦の後半は、手倉森監督の勝負師らしい肝の据わった戦いぶりだった。

 日本は前半20分に1点をリードされ、後半立ち上がりにも失点。こうした展開になると、韓国が試合終盤になると運動量が大きく落ちるというスカウティングデータがあったとしても、監督としては早めに1点を返して追い上げ態勢をつくりたくなり、交代枠を早めに使いたくなるところだ。

 だが、手倉森監督は動じなかった。まずピッチにいる選手たちを落ち着かせ、残り30分のところでようやく切り札の浅野拓磨をピッチに送り込んだ。その7分後に浅野のゴールで1点を返し、さらに1分後に矢島慎也が同点弾。そして、36分に再び浅野が決勝ゴールを決めた。

 監督が試合に向けて完璧な準備をして選手をピッチに送り出しても、ゲームが始まればプランどおりに運ばないのがサッカーというスポーツ。そうした時に、戦況に応じて決断し、次の手を打つのが監督の仕事なのだが、打つ手を逡巡して好機を逃したり、試合前のプランどおりにしか交代枠を使えなかったりする監督は少なくない。

 しかし、手倉森監督は戦況に応じて勝負の機微を読み取り、我慢したり素早く決断したりと、状況に合わせて判断を使い分けられるからこそ、今大会は交代出場した選手が良い働きをする好循環をつくりだせたのだと思う。

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