天皇杯決勝で小笠原が示した、鹿島に受け継がれる「常勝の精神」 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO

 その直後に西と登里享平が接触して揉めたシーンで、クイックリスタートしようとしたのも「あえて」仕掛けていたという。

「(相手が)審判に文句を言っている間に早くリスタートするのも駆け引きのひとつ。そういう駆け引きは、このチームで学んできた」

 いかに勝機を手繰り寄せ、勝つ可能性を少しでも高めるか――。ジーコやジョルジーニョから本田泰人や秋田豊らが学び、それを小笠原も盗んできたに違いない。
 
 くだんのシーンを振り返って、強化の最高責任者である鈴木満常務取締役強化部長が目を細めるようにして語った。

「今日、満男がちょっとエキサイトする場面があったけど、意識してやっているから。やっぱり駆け引きで、あそこで向こうが怯んだというか、駆け引きで勝っている。なんとなくフワッとした中で、ああいうことがあると集中力が増すし、そういうことを計算してやれる満男はやっぱり凄いと今日は思った」

 相手を怯ませた一方で、味方を引き締めたキャプテンの駆け引きが、永木亮太や昌子源、植田直通の目にはしっかりと焼き付いたはずだ。こうした振る舞いは言葉で伝えるものでなく、後輩が先輩の背中を見て学び、受け継いでいくものだろう。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る